6月中旬、アブラビレ最盛期のこの時期に今月は一度も竿が出せずにいた。原因は今月新発売となった『BENKEI』を少しでも
早く出したかったからだ。なんせ、ご存知の通りハンドメイドルアーは完成までに膨大な時間を要するので、出荷予定日から逆算
して作業工程をしっかり組まないと、ドンドン完成が遅れていってしまう。 事、新製品となると、新しい治具を作ったり新しいマス
キングの型を作ったり、新しくパッケージの台紙を作ったりと、ユーザーの目に入らない雑務が多くなり、現行品より生みの苦し
みは大きくなるのだ。

しかし、完成したルアーで自身が気持ちの良い釣りが出来た時や、ユーザーからの嬉しい報告を頂けた時には、いっぺんにそ
の苦しみも吹き飛んでしまうもの。たった数十分程度であったが、今回も気持ちの良い魚に出会う事が出来た癒しの釣行となっ
た。

『BENKEI』の出荷も終わり少し気持ちがホッとした所、ひるがの牛乳(中部圏では有名な牛乳)を飲みに行こうっというプランが
持ち上がった。方向的には長良川の最上流部付近に位置するひるがの高原に行くのだから、ほんの少しでも釣りをしない手は
ないっと車にタックルを積み込んだ。 午後3時からR156号を北上、途中「白鳥美人の湯」に浸かりマッタリしてから再度北上を
始める。途中には幾つも長良川の支流が入っているので、場所には困らないのだが、今回は本気モードではなく、BENKEIで
魚の顔が見れればそれで満足なので、車を停めて直ぐ出来るとこだけを軽く流すだけで良かった。

めぼしい所に車を停め、ささっと準備を終えると、直ぐに入渓。一緒に行った相手は今回釣りはしなかったので、橋の上から自分
の釣りを見ていてくれた。先ず大きな淵を攻めると小魚と共にカワムツが追いかけて来るのが見えた。これ以上水温が上がるとも
うこの場所では釣りにならないなぁ〜っと思いつつ、BENKEIをアップクロスで棚をとりながらヒラを打たせて来ると、引っ手繰るア
タリがロッドに伝わって来た。これはアマゴだなっと寄せようとすると、スッと軽くなってしまった。結構なサイズだっただろうがバラ
シてしまった・・・

しかし、まだ数投、気を取り直して少し上の落ち込みを狙う。午前中の雨で水位は増していたものの、BENKEIはトゥイッチを連続
してかけても無駄に前につんのめる事無く左右にヒラを打つ事が出来る。、流されて直ぐに食わせのポイントを過ぎていってしまい
がちなシュチュエーションでも有効にルアーを魚にアピール出来るので、こんな時でも全くストレスなく釣りが展開出来るのだ。

アップクロスぎみに、流れ出し手前でターンをさせながらヒラを打たせて来ると、これまた引っ手繰るアタリがロッドを伝う。水面をロ
ーリングしながら近づいて来たのは22cmグッドコンディションのアマゴだった。魚釣りである以上釣果に絶対はないが、見られて
いる前でいい所を見せれるとやはり嬉しいもの。橋の上でも笑顔の花が咲いていた。これ一匹でアマゴ釣りはお腹一杯になれたの
で更に北上する事にした。

今度は、せっかくなのでイワナの顔も拝もうと、道路脇の更に小さい沢も突付いてみる。水量的にも20cmあれば大物ぐらいの所
だがきっと竿抜けしてるだろうと、溜まりをダウンでネチネチ探ると数投で食いついてくれた。やはり20cmあるかないかだったが、
素直に釣れてくれてイワナもこの数投で満足出来た。

これで、釣りは大満足。グルッとまわって本道付近のコンビニに立ち寄り、ひるがの牛乳を発見したので、コーヒー牛乳と共に無事
購入。瓶の紙蓋を爪で開けて、したたらない様に裏側を舐める。行儀は悪いがこれがまた情緒があっていいもんだ。瓶入りのひる
がの牛乳は、なめらかなのに生クリームの様なコクがあり、いかにも乳を飲んでいるっという美味しさが味わえる良品だと思う。是
非、観光や釣行の際には試飲される事をお勧めしたい。

話は変わって別の日、これまたBENKEIの撮影用にと釣行に向かった時、白泡の中から完全にフィッシュイーター化した筋肉質の
イワナ38cmをキャッチする事が出来た。はなっから50cmの大物を狙いに行っているテンションなら、まったく大物でもないのだが、
5cm足らずのミノーに反転しながら食ってくる様は、生きる力強さと迫力を十分に感じとる事ができ、気持ちの良い魚との出会いだっ
た。また今年2度目のヤマメとイワナの混種という珍客も向かえ、この日も十分満足出来る釣行となった。


何を持って釣りという遊びに満足を得るか?それは全く人それぞれだろう。ある人は大きさ、ある人は数、ある人はネイティブフィッシ
ュ、ある人は釣り場を取り巻くロケーション、そして、ある人は自分のお気に入りの道具で釣る事。 勿論、何が正しくて何が間違って
いるという事はないのだが、魚に対してどう自分が向き合っているかと言う事は大切にしたいと思う。自分にとっては少ない時間の2
匹の魚も、一日足で稼いだ二ケタの魚や38cmの魚も、同じだけいとおしい存在で、同じだけ大切な時間だと感じている。

もしも、そんな貴重な時間のお役に自分のルアーがたっているのなら、そう考えるだけでワクワクすると共に、いい加減なものなんて
作れないっという思いが沸いてくる。ユーザーの期待を裏切らない為にも、何より自分が楽しく釣りをする為にも、今日も木片に挑み
続けるのだ。

満足の捉え方