お盆も終盤に指しかかった頃、一日自由に使える時間が急遽とれた。これは釣りに行かない手はないと、地図を睨んで何処
に入るか悩んでみる。しかし、流石に急すぎてパートナーが見つからない・・・  そこに白羽の矢が立ったのがEGOISTの大
嶋氏だった。思えば去年から「一緒に沢歩きたいですね〜
と何時も話には出るものの、中々お互いの都合がつかず、同じ
時間を過ごせずにいたのだ。

駄目もとで電話をしてみると、偶々大嶋氏も一日なら時間があると言っていた。そこで、半ば強引に「僕が案内するんでこっち
側の水系来ません?」っと、誘っておきながら福井から山一つ隔てた所まで呼び出すと言う無茶振りに、心よく大嶋氏が応じ
てくれた事で、今回の釣行はスタートしたのだった。


とある道の駅を集合場所として、自分は前日入りして車中泊を決めこむと、深夜2時頃には大嶋氏も遥々福井から車を走らせ
到着したようだった。物音で目が覚めて車の外を見ると大嶋氏が仮眠の準備をしている。久しぶりの再会を喜んだ後、数時間
だけお互いに仮眠をとりAM6:00頃からのスタートとなった。

先ず手始めに、一発大物のポイントに入ってみる。こういう場所は勝負が早いので、朝一番で突付いておいた方が無難と考え
たからだ。深く霧が立ち込める中、軽くポイントの説明をして、本日の釣行は始まった。 「始めてのポイントはワクワクする」っ
と言いながら大嶋氏のキャストは続く。しかしワクワクしているのは大嶋氏だけではなかった。どんな人と釣りに行っても、自
分の知らない引き出しを持っている可能性があるもの。だから、誰と行っても勉強させてもらっている気分でワクワクするのだ
が、やはりスキルの高い人と釣りをする時の方が、より自分にとっては刺激的であり、ワクワク感も大きくなる。その面で大嶋
氏は自分の釣友の中では三本の指に入るスキルの持ち主なのだ。

最初のポイントは、今回は駄目そうだったので、早めに切り上げて、魚の顔が見れる沢に入る事にした。太陽は昇っている
ものの、流石に豪雪地帯の沢だけあって8月でも水温は低くネオプレーンソックスに入った水が体温で温まるまで、足が軽
くしびれる程だ。自分も九頭竜水系や色々な川に行くのだが、九頭竜水系がホームグラウンドの大嶋氏からしてもやはり
水温は確実にこちらの方が低いらしい。 水量は乏しいもののブッシュが多いこの沢、隠れる場所の数だけイワナはいる所
だ。尺モノは中々望めないもののキャストコントロールさえ確かならコンスタントにイワナと出会える所でもある。

ポツポツと数匹イワナを釣りながら歩くと、難易度の高いポイントが見えて来た。大嶋氏がストーキングでポイントに近づき、
一発必中のボウアンドアローキャストを見舞う。一直線に放たれたEGOISTミノーのリーフは、吸い込まれるように水面と倒
れた木の隙間に入っていった。着水と同時に「釣れましたねこりゃ〜」っと声をかける。ヒラを打ちながら流れてくるリーフ
の後には、今にも食いつかんばかりにやる気になったイワナが追いかけてきた。トゥイッチを続けると、そのままヒット。後
方からカメラのファインダー越しに一連の動作を捉えていたのだが、全てにおいて無駄のない美しい瞬間だった。

この沢では程よく遊んだので、今度は違う所に行ってみる事に。今回は意識して渓相の違うポイントをランガン形式で釣って
行こうと思っていたからだ。なぜなら、ワザワザこちら側に来てくれたのだから、色々なロケーションの中で楽しんでほしかっ
たのだ。

あいにく、お盆中に受けたプレッシャーのせいか、もの凄くいい思いは出来なかったものの、しっかり手順を踏めば、それなり
に魚も答えてくれたので、飽きる事無く釣り続けて貰えたと思う。今回は案内役に回ったので自分自身は数匹しか触らなかっ
たが、複数で釣行に来ている時は相手が釣れただけで自分も嬉しいし、「相手の喜びこそ自分の喜びである」っというのが二
人の共通する思想なので、今回も本当に楽しい時間を過ごさせてもらう事が出来た。大嶋氏には感謝の言葉しか出てこない。

この日は、魚と楽しい時間を追い求めて、ついつい朝から日が暮れるまで丸々一日遊んでしまった。最初は二人とも、午前
中に数箇所で適当に遊んだら、温泉に浸かってゆっくりしよう、っと話していたのだが、楽しい時間というのは何時もあっとい
う間に過ぎてしまうものだ。谷から上がり二人並んで車まで戻る頃には時計の針は7時を回っていた。

帰りに二人で温泉に入り、一日の疲れを洗い流してから、軽く夕飯を済ませお互いの帰路に着いた。年齢でいったら一周り
以上違う相手であるが、大嶋氏は自分の事を友と呼んでくれる。自分も、人生の、そして釣りの先輩として尊敬しつつも大
嶋氏を友と呼ばせてもらっている。貴方には心を許して同じ時を過ごせる仲間がどれだけいるだろうか?釣りだけに限らず、
お互いを高めあえる仲間が一人でもいるとしたら、それはとても幸せな事なんだと気づくべきだろう。

もしも、その相手が釣りという共通の趣味を持っていれば、その幸せは何倍にも膨らむのだから・・・
友招きて時忘れ