9月の釣行記を書き終え、今年のトラウトジャーニーも終了したなぁっと思っていた9月最終週。　嬉しい事に、時間が空いたの
で急遽釣りに行く事にした。数日前にあんな良い思いが出来たのだからもういいだろっ！という自分と、折角禁漁前に時間があ
るのに釣りに行かないのか？っという自分が、数分葛藤をしていたものの、気が付くと車に道具を積む準備をしていた。体は正
直だ。


AM:8:40。これから家を出て気持ちの良い魚に出会える場所を幾つか考える。イワナはもう満足する終わり方が出来たので、今
度はアマゴだけに標準を絞って場所の選定をしていった。考えたあげく、今年本当の最後を飾る場所は木曽川本流に決定した。
場所が決まれば後は向かうだけだ。時間がもったいないので高速道路を使う事にしたが、ギリギリAM9:00前に入る事が出来た
ので、何とか半額の通行料だけですんだ。ガス代もバカにならないので高速代だけでも安くなると本当にあり難いものだ。

そんなこんなで、1時間程走ったインターで下り、早速釣り開始だ。
早朝からだと、季節的にもう厳しいだろうが、時間も昼に近くなって来ていたので、ウエダーは履かずドライパンツにウエーディン
グシューズの、夏使用のまま川べりに降り立った。朝方雨が降ったが、本流の水位が変わる程の雨量ではなかったようだ。最
初の場所は、強い流れが大きく岩盤に当たっている大淵だ。ベンケイのフルキャストでも対岸には届かない程の、広さと深さを持
った一級ポイントだ。フルキャストでベンケイを送り込むと流芯付近に着水した。流れが強いので直ぐに糸ふけを取りながらベン
ケイを流す。絶対に魚は居るはずだと確信はあるので、後は信じてタイミングを待つのみだ。
粘る事３０分ぐらいだろうか、その間追ってきたのは1匹だけ。しかしその一匹とは３０ｃｍを優に超えるアマゴだった。少し距離を
置いて興味本位で見に来ただけだったが、やはりここには可能性を感じたので、夕方のラストチャンスに賭ける事にした。

フィナーレを迎える場所が決まったので、残った時間は来年の為のポイントの新規開拓に使う事にした。竿を振る時間は少なく
なってもこれはこれでワクワクして楽しいものだ。車の停めれる所や河原までの降り口など、全く前情報無しに突撃しながら、程
よく時間は過ぎていった。ある場所では藪を１０分以上も掻き分けてようやくたどり着いた。そこはもの凄くよい場所だったのだが、
誰も知らない所だと思ったら、少し移動した場所から階段付きの祖間道が作ってあった。まったくトホホな経験だが、こんな苦労
の積み重ねが明日の一匹に繋がると信じている。こんな経験が多い人程、人より美味しい思いをしているはずだろう。

さて、新規開拓の探検も終わり丁度いい時間になってきたので、例の場所に戻る事に。
自分の場合、写真に収めるという仕事がある関係上、魚はフラッシュ無しで露出の利く時間までに釣らなくてはならない。なので
必然的に最高の時間はそれ程残されてはいない。早速キャストを繰り返すが、昼前と同じように流しても反応はない。そこで、も
う少し流れ出し付近を重点的に攻める為、クロスでキャストして、流れに乗せてカウントダウンしながらダウンに持ってくる。水流
で勝手にベンケイが踊っている事を感じながら、リールを巻かずにロッドだけを動かしていると、ティップが下流に一気に引っ張ら
れた。

相手の体に受ける水流抵抗で大きさを予測する、「デカイっ！」ゆっくり寄せて来ると魚体がやっと確認出来た。ベンケイをしっか
り食わえていた彼は、グィっと鼻は曲がり、綺麗に婚姻色の出た、最高のプロポーションのアマゴだった。思わず「よしっ！よしっ
！よしっ！」っと、声をあげてしまっている自分がそこには居た。

ランディングしてメジャーを当てると３６ｃｍあった。こんなに綺麗な魚体の尺越えアマゴは、そうは簡単には御目に掛かれないだ
ろう。何時もより少し長く写真に付き合って貰った後、元気にご帰宅して頂いたが、あんなに素晴らしいＤＮＡが、少しでも長く後世
に残って行ってくれたらと、願わずには居られなかった。

気が付くと辺りはもう薄暗い。車に戻って竿をたたみ、ウエーディングシューズの砂をはらう。この道具達とも来年までしばしのお
別れだ。　「今年も色んな所で色んな思い出を一緒に作ったよな。来年も宜しく。それまでおやすみ･･･」