2月1日、今年も先陣を切って長良川中央漁協圏内の河川が解禁となった。
釣り人にとって解禁日は祭りに近い行事だろう。多くの人達が、この日の為
にタックルを新調したり買い足したりして万全の体勢を整えるのだ。中には、
解禁日が平日に当たる年は有休を取ってまで待ちわびるつわものもいる程
だ。

自分はと言えば、休みは多少融通がきくのと、長良川本流なら30分もあれ
ば何時でもポイントに行けるので、逆に銀座になるようなこの日は避けてこ
こ数年は解禁日に釣りに行くことも無かった。

しかし、去年の釣行回数が少なかったせいか、今年は解禁日が待ち遠しくて
待ち遠しくて仕方がなかったので、今年は久しぶりに解禁日から川に立とうと
決めていたのだ。


とは言え、放流場所でじっと陣取りをして延々とそこで釣りをするのは性に合
わないので、上流からシラメを追いながら下っていくランガンスタイルで釣って
行く。実際は長良川でもシラメの成魚放流が行われているので、ネイティブフ
ィッシュと放流魚を釣り分けるのは不可能に近いのだが、本来のシラメは遥か
遠い海までサツキマスになる為に、群れを成して下って行くのが普通で、この
時期は群れに当たってライズがそこらじゅうで起きていれば、それなりに数釣
りが楽しめるのが特徴だ。


最初に入ったのは淵とトロ場が長く続くサツキ狙いでも有名なポイント。ゆっく
りめで10時頃家を出たので、きっと何人も先行者がいるだろうと思っていたが、
車が停まっていないばかりかポイントに立っても先行者の足跡すらなかった。
最近は解禁日でも平日だとこんなもんかな?っと思いながら、こちらとしては
好都合だとキャストを開始する。

表層から少しずつ棚を落として探ってみるがまったく反応がない。200m程歩
きながら探ってみたが、生命感を感じれなかったので、さっさと場所移動をする
事にした。この後、3箇所程流してみたがいずれも反応が無かった。

ある場所ではフライのイベントらしきものが行なわれていて、横一列になってキ
ャストをしていたが、誰一人として釣れている様子も無かった。放射冷却も無く
昼までは極端に寒い事もなかったので、魚がいないだけなのかなぁ?っと、更
に下りながらポイントを流すと、パラパラと雨が降り出してきてしまった。

昼から雨が降る予報が出ていたのは分かっていたが、思いの他早い降り出し
に、このまま帰ろうか、カッパを着てもう少しやってみようか車の中でパンを頬
張りながら検討していると、雨の中頑張っていたルアーマンが魚をヒットさせる
のが目に入ってきてしまった。

居ると分かればやらない訳にはいかない。バックからカッパを出して準備を始め
る。っと共に、今釣ったルアーマンがどんな釣り方をしているか観察してみると、
ライトスプーンの表層引きをしているようだった。シラメはこの時期に飛ぶ小さな
虫を主食として水面を意識している事が多いので、表層付近をゆっくり引けるラ
イトスプーンは確かに有効な手段だろう。

只、今回はそのようなスプーンは持って来てなかったので、ベンケイやプロトミノ
ーなどで、ロッドを立てたりしながら同様の層をなるべくゆっくりキープ出来るよう
にして対応してみた。よくショップのスタッフの人に、今釣れているルアーって何
ですか?とか、どれが釣れるカラーですか?っと質問をする人がいるようだが、
この質問をしている間はなかなか次のステップには行けないだろう。

つまり、魚に口を使わす事が答えだとすると、そこにたどり着く為の方法は一つ
ではないのだ。『何を使ったから釣れた』かが重要なのではなくて『今居る魚の
状況にどう合わせたから釣れた』かが重要なのだ。答えが分かっていれば魚へ
のアプローチは無限にあると言える。だから、今持っているものがその状況にも
っともふさわしいものでなかったとしても、応用力次第で魚は近くもなるし遠くも
なるのだ。

あいにく雨は本降りになってしまったが、沖の方で単発だがシラメはライズをして
いる。フルキャストの後直ぐに糸ふけを取りロッドを立てながら小刻みにシェイク
を入れると、待望の今年初ヒット。銀銀にスモルト化したシラメがそれ程暴れるで
もなく手元まで寄って来た。頭で描いた様に答えが出ると、やはり気持ちがいい
ものだ。


その後もう一匹を追加したが、止みそうにない雨と指先の冷えに負けて2010年
の初釣行は終了した。数ヶ月もすれば同じポイントにサツキマスが帰って来る。
今年もこの川に、そして日本中の色んな川や湖にお世話になるだろう。今年も敬
意を持って自然の中で遊ばせて貰いたいと思う。

長良シラメに逢いたい