やっと梅雨が明けたと思ったとたん、溶け出すような暑さに見舞われた
酷暑列島の日本。正式記録でないものの岐阜では既に40℃を超えて
いる所もある程・・・

数週間前に紙面をにぎわせていた未曾有の水害が嘘のように晴れ上
がり、草木も暑さの為元気がない様に見える程だ。

さて、今回の釣行はゲリラ豪雨があった7月中旬より更に少し前に遡っ
たベンケイハードシンキグモデルのテストでの事だ。

昼前に仕事を終えて、やっとテストに行けると思った時には鉛色の空か
らポタポタと雨粒が落ち始めていた。南からの雲だった為、高速道路を
飛ばして少しでも北の地に向かう事に。一時間程走った長良川水系の
支流を今回のテストの場所として選んだ。理由は水量もあり、しっかり
とした瀬と淵がある一般的な場所であったからだ。テストの場合、あま
り小谷に入ってしまうと、魚の反応は見やすいものの、ルアーを動かす
距離が短くなってしまい、ルアー本来の持っている性能をチェックする
テスト釣行では、目的が曖昧になってしまうのだ。

現場に着くと、時間の問題ではあるもののまだ雨は降ってきていなかっ
た。この日は本降りになる事は確実だったが、幸運にも雨の降り始めと
言うアマゴには持って来いのタイミングでテストを行う事が出来た。

先ず、大きな淵に行き、持って来た数々のプロトをとっかえひっかえ泳が
せて見る。同じ重さでもオモリの位置、リップの付け位置、角度、フロント
アイの位置など、無数のパターンがある為、沢山作ったモデルの中から
大半はここでふるいにかけられるのだ。そこから可能性のありそうな数
個を、更にプライヤーでアイの位置を変えながら、自分の目指す動きに
近づくまで持って行くのがテスト釣行の大半の時間だ。

結局、釣れるルアーと言うのは、自分のイメージした動きをどれだけスト
レス無くしてくれるかだと自分は思っている。だからビルダーの凄く釣れ
るルアーがイコールで皆の釣れるルアーでないのだろうが、そここそが、
ハンドメイドルアーの個性であり醍醐味ではないかと思うのだ。


少しするとここにも雨がやって来た。プロトを使って、アップ、クロス、ダウ
ンと、色んな引き方で動きを見ながら魚の反応を伺って行く。するとダウン
クロスで入った流れ出し付近から追尾してくる魚影を発見。

ロッドを少し立ててシェイクを小刻みに入れると、掛ける事に成功した。寄
せて来ると。品の良い朱点の入った綺麗な24cm程度のアマゴだった。

テストの時は一匹釣れると、又そこから自問自答が始まる事もよくある。
この時釣れたのは流れの強い様なダウンでは浮き気味になるものの、フ
ラッシングは今回の中では一番大きかったモデルで、それとは別に、流
れにはしっかり食いつくもののトゥッチのレスポンスは劣るものもあった為、
このアクションだったから今の魚は獲れたのか?はたまた違うモデルな
ら、もっと釣れていたのか?色々考えてしまうのだ。しかし、この悩みもビ
ルダーにとっては楽しい時間の一つであると言える。

この様にして新製品は産声を上げていく。自分に限らず、世界中のビルダ
ーが、きっとこうした時間の中から名品と言われるルアーを生み出して来
たのだろう。目指すゴールに到達するまでに早い遅いはあれ、机上の空
論で完成出来る程、ルアー作りは甘くない。

バルサ、プラスチックに限らず、初めて使うルアーをラインに結ぶ時、製作
者が何を思ってこのルアーを作ったのか?このルアーはどのように使えば
一番ポテンシャルが出せるのか?など、是非思いを巡らせてから使ってみ
て欲しいと思う。

製作者の思いが少しでも理解出来れば、そのルアーを操るのが何倍も楽
しくなる事だろう。彼方が手にする全ての道具には多かれ少なかれ、作り
手のスピリッツが閉じ込められているのだから。

雨の日の試行錯誤