そのプレッシャーは尋常ではないらしく、何時もなら容易に決まる正確なキャストも少しだけみだれベンケイが手前の茂みに引っかか
ってしまった。更にあろう事かラインが切れた弾みでベンケイは水の中に落ちてしまったのだ。だがKawaさんは決して諦めない、なん
と自分が履いていたネオプレーンのゲーターを靴まで下げて、そのまま腰まで浸かりながらルアーが落ちた辺りをズリズリと歩き出し
たのだ。見ている3人も爆笑しながら見つめていると、なんと本当にゲーターにベンケイのフックが引っかかってくっついてきたのだった。
Kawaさんは歓喜の大声を上げて僕らは更に大爆笑する。考えてみればビルダーにとってこれだけルアーを愛して貰える事は本当に
本当に嬉しい事だ。腹の底から笑えて心の底から喜びを感じさせて貰える出来事だった。

歓喜の雄叫び

そしてドラマの結末もしっかりとKawaさんの手によって締めくくる事が出来た。途中スコールが来たせいでこれ以上は続行不可能かと
思えた数十分後、Kawaさんから「やりました!」っとの声が出た。僕らが談笑して目を逸らしたほんの少し間に魚はネットの奥にしっか
りと納まっていたのだ。その魚は、尺には届かないもののデップリお腹の理想的なボディーをしたヤマメで、エゴイストのリーフをアップで
ヒラを打たせながら食わせのタイミングを作って釣った一匹だった。偶然にもネットには散り落ちたサクラの花びらが付いていて、魚の鮮
やかさを一層際立たせているような気がした。

更に数日後、実家に帰るにはまだ時間があると言い、今度は岐阜の川を案内したのだが、岐阜の谷をクタクタになるまで歩いてしっかり
と楽しんで貰えた思う。この釣行記を書いている頃にはKawaさんも実家に戻っているだろうけど。今度は僕が案内してもらってゴギを釣
りに行きたいと思っている。釣り道具を通して日本中に仲間が増える。そんな事を考えるだけでワクワクしてしまう・・・

5月の始め、大嶋氏のエゴイストとシンドラーの両方のユーザーさんであるKawaさんが東京から実家に帰省しがてら福井でサクラマス
を狙うと言うので、一山越えて会いに行って来た。運悪く雨の影響で本流は大増水していて楽しく釣りが出来る状態ではないと言う事
たったので、水の引き始めた渓流に行く運びになり、その近くで待ち合わせをする事になった。

Kawaさんは大嶋さんとエゴイストユーザーである森永さんの3人で既に現地入りをしているらしかったが、僕は道を一本間違えてしまい
少し遠回りをする羽目になってしまった。その為遅れを取り戻そうと普段使わない道を思いつきで走ってみると、地図上では気にもしな
かった川が道の横を流れている事に気が付いたのだった。

急いで行かねばと思いながらもそこは釣り人のスケベ根性「2、3投してみるか」っと車を路肩に停めてベンケイを投げると、直ぐにヒッ
トしてしまった。それも物凄くプロポーションの良いヤマメだったのだ。更に雅かと思いながら他の所も投げるとまだ追って来るではない
か。「これは如何」っと直ぐに大嶋氏達に電話を入れて待っているはずの三人を逆にこちらに呼ぶ事にしたのだった。


程なくして3人と無事合流が出来て固く喜びの握手を交わすと、早速釣りを再開する事にした。僕や大嶋氏達は来ようと思えば何時でも
来れ
るので、Kawaさんに釣って貰う事になり僕達は川の上から見学させて貰う事にしたのだが、当のKawaさんからしてみれば製作者
を二人も背にしながらの釣り、メチャクチャプレッシャーがかかっていただろうと思う。