その後、本流をランガンしながらアマゴを釣り、暑くなって来たので支流の谷に入る事にした。車を降りて沢まで
行くとなんとも心地良い風が吹いて来た。透き通るような水の色と涼しく木々を通り抜ける風は最高の癒しの空
間だと言えるだろう。暑い時の渓流程気持ち良い物は無い。ここでシンゴ君に待望のヒット。堰堤の下に隠れて
いたのは何とも綺麗な谷アマゴだった。この谷では数匹釣れるもサイズが出ないので他の谷に移動する事に
した。

途中、カップラーメンとお手製オニギリで昼食をすませ暫し休憩をした後、木曽川の支流の更に支流、魚止め
の滝の更に上流で今回の本命を探すべく後半戦をスタートさせた。二人で小さな淵を交互に釣りながら上がっ
て行くと小さくも水深のあるスポットがあったので、オモワザを底まで落とし込んでシェイクを入れた所で下から
黒い魚体が食い上げてきた。元気の良いその子はサイズこそは22cmぐらいなものの混血と思われるヤマト
系統のイワナだった。写真を撮った後そっと元居た場所に放すとイワナは元気に白泡の中に戻って行った。

ヤマトイワナに会いたい

9月中旬、兼ねてからオファーのあった地元の釣友であるシンゴ君と残暑厳しい平地を抜け出してヤマトイワナの
生息する木曽川水系のとある支流まで車を走らせた。朝一から釣りに行けるのは久しぶりなのでワクワクして遠足
前の子供の様になかなか眠着けなかったがタイマーよりも早くパッチリと目は覚めてくれ気持ち良い出発となった。

最初に着いたのは木曽川の本流。谷に入れば昼中でも釣果は期待出来るので、先ずは本流のアマゴを狙ってそ
の後ヤマトを狙いに行こうと言うプランだ。この辺りの本流はダムが多く水位の変動で釣果もかなり左右される場
所であり、長く川を通す事が出来ない地形なので車で各ポイントを流し打ちしながらのスタイルとなる。

さて最初のポイントに着きキャストを始める。シンゴ君には流れが対岸の岩盤に当たって大きく巻き返している場所
を打ってもらい、自分はそこから少し下の方でキャストを繰り返す。ルアーはオモワザ。飛距離が稼げる上に本流
の重たい流れの下を探る事が出来る大場所では外す事の出来ないルアーだ。シンゴ君もヘビーシンキングのミノー
を使い数投した所で幸先良くヒット。それもロッドがかなり絞られているではないか。

しかし、「尺はある!」っと言ったか言わないかの間にシンゴ君の目の前で魚は流れの中に消えてしまったらしい。
僕はガックリ利肩を落とすシンゴ君に近寄り「尺あまご逃がしちゃったの〜!ざんね〜ん」と笑って声を掛けた。こ
の悔しさはなんと言っても釣りの醍醐味であり、自身を進歩させる大きなきっかけの一つである訳だから人事なが
らシンゴ君も良い経験をまた一つ出来たのだろう。

この後もプロトのミノーでもう一匹27cmのヤマト系統のイワナを釣り上げて、夕方の本流を狙う為にこの谷を後
にした。最後の最後にシンゴ君もこの日一番大きくて綺麗なアマゴをキャッチしてこの日の釣りは終了し、帰りに
温泉に浸かって疲れを癒しての帰宅となった。シンゴ君も久々の丸一日釣行で心地よい満足感と疲労感に包ま
れているようだったのでお互いに最高の休日だったと言える。


今回の日記を書くにあたり、ヤマトイワナに関する文献を調べ直したのだが、改めてヤマメやアマゴと違いイワナ
と言う魚の個性の豊かさに驚かされると共に、一般に純血と言われるヤマトイワナの種の保存が僕達釣り人や漁
協の力無くしては達成しえないと言う現実をまざまざと思い知らさせた。魚と言う資源を守って行く為に僕達は 無
関心で居られない所までもう来ているのだろう。