えらい日に連れ出してしまったなぁ〜っと思いつつ、少しでも活性の高そうな目ぼしい所をランガンするも、小さな固体
がポツポツ釣れるだけでイマイチ締まらない。しかし、最終的にはしっかり結果を出してくれる所は流石大嶋氏だ。それ
は様子見で降りた川での出来事だった。、ついさっきまで餌師の方達が釣りをしていた状態で、何匹か魚篭にストック
していたのを横目に竿抜けしているであろうポイントを丹念に攻める大嶋氏。チョットした堰堤横の巻き返しから引きず
り出したのはスレンダーながらも手尺で37〜38cmはあるイワナだった。パパッと魚を傷つけない様に写真を撮り労
わるように流れに帰す大嶋氏の所作は何時もながら紳士的な姿で、この人は本当に生き物が好きなんだと感じる光
景だった。

この後もやはり厳しい状態は変わりなかったものの、要所要所ではしっかり魚を出してくれ、最後には大嶋氏自作の
スピナーで25cmの幅広アマゴまで加えてくれたので今回のガイドは何とか面目が保たれたと思う。今回の釣りは丸
一日を僕のペースで何回土手を上り下りさせたか判らないぐらい引きずり回してしまったが、魚に会いたいと思い続け
る事、更に大嶋氏のテクニックが合わさっての釣果だったのではないかと思う。

九月後半、この時期の毎年恒例行事となったエゴイスト大嶋氏との釣りに行って来た。今回の舞台は木曽川本流から
支流に掛けてで、ゆっくりのんびり釣りをしたい大嶋氏を引きずり回しての釣りとなった。

現場について車を降りると寒さが半端でない。大嶋氏は寒いなぁ〜と言いつつも服は2枚で十分そうだったが、自分は
と言うとカッパを合わせて4枚レイヤーして丁度良いぐらいだった。なにせ息が白いぐらい寒かったのだ。今日はガイド
役なのでなんとしてでも良い結果を出したいと思っていたのだが、この急激な気温の低下には始める前から一抹の不
安を覚えた。

案の定、準備を済ませ釣りを開始するも殆ど魚の反応は無く、たまに見せる魚影も後ろの方をやる気なく着いて来る程
度だった。今回の自分は殆ど竿を持たずファインダー越しに大嶋氏を見つめるばかりだったが、何処の場所もドンピシャ
で食わせのコースをトレースしているリーフに襲い掛かってこなかったので、そうとう厳しい状態だったと思われる。一週
間前の台風による記録的な大雨や前日まで3連休だった事、更に急激な温度変化は魚には相当のプレッシャーになっ
てたのだろう。

竿の重みから瞬時に尺を超えている事が確信出来たので、興奮しながらもなるべく平常心を保つように自分に言い
聞かせる。流れに逆らって少しずつ寄せて来て無事ネットインさせる事が出来た。ここで面白い発見があったのだが
実際に三脚を立ててビデオを自我撮りしていたので後から見直すと、掛けてからネットインまでは1分あるかないか
ぐらいだったが自分はもっと長く格闘したような気になっていたのだった。よく大物を釣った時に色んな人が獲り込み
までに何分、何十分も掛かったと言うが、きっと興奮していている為に走馬灯効果で時間がゆっくり感じるのだろうと
思った。

ネットに納まったアマゴはパーマークも綺麗に残っていて、頭の先から尻尾の付け根まで生命力に溢れた美しい固体
であった。釣った場所は足場が悪く写真が撮れる状態でなかったのでシンドラー製のライブバックに直ぐに移し足場の
良い所まで移動して写真を撮影。シンドラーライブバックは一番傷を付けていけないエラに棒を通すストリンガーと違
い全く魚を傷つけないので撮影をする為に少し魚に時間をとらせてしまう時は本当に役立つ代物だ。

撮影を終えて長さを測ると33cmあった。夢の40cmアマゴにはまだまだ届かないものの最高な形で今年の釣りを終
える事が出来た。諦めない事、思い続ける事が良い魚に出会う最たる方法だと確信出来た。

さて、来年はどんな魚に出会えるだろうか。同じ日、他の場所で金属的なアタリがあった後、全くドラグが止まらないま
ま暴れられバレてしまった怪物を来年は仕留める事が出来るだろうか。ゴールと共にスタートする。一年中鱒への思
いは止まりそうにない・・・

そんな感じで日の出から何度もポイント移動を繰り返して辿り着いた所で遂に願いは叶った。前後に如何にも釣れそ
うな車も停めやすい場所がある為に多分地元の人しか来ないであろう見落としがちな所を発見したのが丁度時計が
12時を指していた頃だった。川幅も程よく広く一見流れはそんなに無さそうだが、しっかり流速もあり魚の着き易い大
きな岩が幾つも底に入っていたので、流すポイントも見極め易い所だった。クロスからダウンに掛けてオモワザを流す
もオモワザはリップの形状から強い流れの中でのダウンでは浮上しやすくなる為、オリジナルベンケイに替えて再度
流し直す
着き石の裏柄にベンケイが行った辺りでしつこくシェイクを入れると金属的なアタリと共に一気に竿が弧を
描いた。

そして、思いは叶うと言えば最後の最後、禁漁前日に今年も思いが通じたのか良い魚に出会える事が出来た。
大嶋氏と別れてから数日後、僕はまた木曽川の本流に立っていた。狙いは木曽川の尺アマゴただそれだけ。
小谷と違って一匹獲れるかアブレるかと言う釣りだが、今年は釣行回数も少なく尺アマゴもまだ釣ってなかっ
たので、例えアブレたとしも心残りの無い様に本流のみを攻めようと舞い戻って来たのだった。


本流の釣りは基本的に大場所狙いとなり川通しをして長く釣りをする事は少ないので、大体一箇所を長くても
30分くらいと割り切りどんどん場所移動をして行く。既に知っているポイントや、まだ降り口も知らないポイント
を探して行ったり来たりするので実際の釣りをしている時間より遥かに車に乗ってポイントを探している時間の
方が多いぐらいだ。

ただ、自分にとっては新しいポイントを自分の足を使って探し当てる楽しさは竿を振っている時間と同等かそれ
以上にワクワクする時間なので実際の釣り時間が減ったとしても全く苦ではないのだ。

思いは叶う